「恩恵にあずかる」「恩恵を受ける」「恩恵にあやかる」・・・どれも同じ意味?全て正しい使い方?
ふと会話をしているとき、こうした言い回しに悩むことはありませんか。
今回は、「恩恵に〜」という表現について解説します。
正しい表現、間違った表現
まず、「恩恵」を使った正しい表現とよくある間違った表現を例文で見てみましょう。
・自然の恩恵を受け、今年は大豊作となった。
なぜ「恩恵にあやかる」だけが間違いなのでしょうか。
それを解説するために、まずは「恩恵」という言葉の意味を詳しく見ていきます。
「恩恵」の意味
恵み。いつくしみ。「―を施す」「自然の―に浴する」
引用:goo 国語辞書
「恩恵」という言葉は、実は同じ意味を持つ "恩" と "恵" の二文字で構成されています。
"恩" と "恵"、どちらの漢字にも「めぐみ」「いつくしみ」「情け」という意味があり、二文字が合わさって「恩恵」という熟語になっているんですね。
恵みとは・・・いつくしむこと。情けをかけること。慈愛の心。また、困っている人を哀れんで施し物をすること。
いつくしむとは・・・他人にめぐみや心をかけ大切にすること。また、その心。
情けとは・・・人間が本来持っている優しい心、感情のこと。他人に同情し労わる心。
総じて、「恩恵」は他人や自然など外部からもたらされる "幸福や利益" と言えます。
「恩恵にあやかる」は間違い
「あやかる」とは
1 影響を受けて同様の状態になる。感化されてそれと同じようになる。ふつう、よい状態になりたい意に用いられる。「彼の幸運に―・りたい」
引用:goo 国語辞書
2 影響を受けて変化する。動揺する。「風速み峰のくず葉のともすれば―・りやすき人の心か」
「あやかる」には、"同じ状態になること"、"似ること" といった意味があります。
よく「〜〜にあやかりたい」のような言い回しで使われますが、これは "現状より良い状態になりたい" "自分もそれと近しくなりたい" と願っている意なのですね。
では、この「あやかる」と「恩恵」が組み合わさったらどうなるでしょうか。
「 "幸福や利益" と "同じ状態になりたい"」
これでは、意味が通らないですよね。
だから「恩恵にあやかる」は間違いなのです。
なぜ誤用が多いのか
間違った表現でありながら、「恩恵にあやかる」が使われている場面は多いものです。
なぜこのような誤用が多いのか詳しいことは定かではありませんが、理由のひとつとして言葉が似ていることが挙げられるでしょう。「あずかる」と「あやかる」、文字面も似ていれば音も似ていますよね。
ちなみに「あずかる」は漢字で「与る」と書きます。意味は、"物事に関わる" や "分け前をもらう" など。
「与る」という漢字が読めず、誤って「あやかる」と発音することで誤用が広まったとも考えられそうです。
"与る" を goo 国語辞書で調べる
「恩恵」は得るもの
さて、恩恵は「あやかる」ものではないということが分かりました。
恩恵とは「得る」ものですね。
そのため、以下が正しい表現です。
「恩恵に浴する」
「恩恵を受ける」
「恩恵を享受する」
「恩恵をこうむる」
おわりに
いかがでしたか?
今回は、「恩恵に〜」という表現についてお伝えしました。
✔️「恩恵にあやかる」は間違った表現である。
言葉の持つ本来の意味を理解しながら、正しく美しい日本語を使っていきたいですね。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。